【日本】2024年5月の消費支出・景気動向指数

07-05 マネックス証券

2024年7月5日(金)発表
日本 消費支出・景気動向指数2024年5月の公表値

【1】結果:消費支出は弱まるが、景気の基調は改善

2024年5月の家計調査、2人以上世帯の消費支出は実質ベースで前年比マイナス1.8%、季節調整済の前月比マイナス0.3%の結果となりました。前年比のデータでは前回4月の公表値にて、プラス転換するも今回再びマイナスへと転じました。季節調整済みの前月比データでは2ヶ月連続でマイナス推移しており、一進一退かと思われた消費は、足元では伸び悩んでいる様相です。

【図表1】2024年5月 家計調査(消費支出)と景気動向指数の結果
出所:総務省、内閣府よりマネックス証券作成
【図表2】消費支出(2人以上の世帯)の推移(実質、前月比、前月比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成
※ 前月比は季節調整値

2024年5月の景気動向指数は、一致指数が3ヶ月連続で上昇、先行指数・遅行指数は反転して上昇に転じました。一致指数は鉱工業生産を始めとする生産関連の指標と、商業動態統計の小売・卸売がプラスに寄与し、前月から1.3%ポイントの上昇、図表3から直近のトレンドは右肩上がりの様相であることがわかります。基調判断は景気後退の可能性が下げ止まっていることを示す「下げ止まり」へと修正されました。

先行指数は、0.2%ポイントの上昇、ほぼ横ばいといえるでしょう。消費マインドの悪化がマイナスに寄与するも在庫の改善があり、両者が相殺しています。遅行指数は現時点の速報時では、消費者物価指数と最終需要財在庫指数がプラスに寄与した結果2.1%ポイントの上昇に転じました。

【図表3】景気動向指数の推移(2020年=100、シャドーは景気後退期)
出所:内閣府よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:消費マインドの悪化から家計防衛的な行動がうかがえる

足元では、消費者態度指数、景気ウォッチャー調査の2指標の低下からうかがえるように消費マインドの低下が確認されます。今回の家計調査の結果も、マインドの低下が消費に表れている内容であったと考えられるでしょう。

【図表4】消費者態度指数(2人以上世帯)・景気ウォッチャー調査家計動向(現況)の推移
出所:内閣府よりマネックス証券作成
※ 指標ともに季節調整値

一方で、今回5月の2人以上世帯のうち勤労者世帯の実収入は、50万231円と前年比3%、実質20ヶ月ぶりの増加となりました。そのため可処分所得(いわゆる手取り収入)も前年比5.3%、同様に20ヶ月ぶりの実質増加であり、春闘の結果を受けた賃金の上昇が確認できます。

収入の増加が確認できたことはポジティブにとらえられますが、家計は先行きの不透明感を意識し消費の増加にはつながっていない状況であると考えられます。6月も同様のトレンドであった場合、4-6月期のGDPも消費がプラスに寄与する可能性が低くなることも想定すべきでしょう。

【図表5】2人以上世帯のうち勤労者世帯の実収入・可処分所得の推移(実質、前年比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

【3】所感:供給サイドの消費は横ばいであり、過度の心配は不要か

一時、基調の悪化を示すような推移をしていた景気動向指数も、自動車産業の回復を起点に持ち直した印象です。4-6月期中に新たに発表のあった認証不正問題は一部では6月末時点で概ね停止の解除が実施されたとの報道もあり、懸念材料が払しょくされつつあると考えられます。

消費ついては足元の円安動向や政府の補助金縮小によるエネルギー関連価格の上昇が家計負担になると考えられ、消費マインドの悪化、家計防衛的なスタンスが指標に表れたものと考えられます。日銀が発表する供給サイドの消費をまとめた消費活動指数をみると、5月の消費は横ばいと見受けられます。家計調査は調査対象のサンプル次第で結果にブレが出るものと言われており、過度に心配する必要はないかもしれません。いずれにせよ、賃金の上昇が確認できつつある中で、次は消費へ波及していくことに期待したいと思います。

【図表6】消費活動指数(2015年=100)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太

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